メインクーンはじゃがいもですか?
コオロギはおろおろするだけで、電話を操作することもでることも出来ない。脳みそまでが筋肉で出来上がっている、ザ・体育会系は瞬発力にだけは長けていたがアドリブがきかない。
「今俺らのことを、ふにゃららと言わなかったか? こらこのクソ野郎」
おっさんと言われたことに憤慨する子供な29才男性二人は、同じような動きで髪をかき上げ、とっておきの決め顔でポーズを決める。
ドヤ顔もこの二人なら許せる範疇だ。
二人とも顔はいいけどおつむは弱め。といった残念さが非常ーにもったいない。
「この筋肉バカがどこに目ん玉くっつけてんだよボケナス」
がつん! とコオロギの頭に一発こぶしを落とした霧吹、
ばこん! とコオロギのケツにタイキック並みのケリを入れる修、
涙目になるコオロギに、哀れな目を向ける次郎、真っ正面を捉えて動かない修の運転手、次郎の後ろに隠れて見ないようにしている葵、誰もが自分の味方じゃないと悟るコオロギは、自分が落ち葉のように薄っぺらい人間に思えて悲しさがこみ上げてきた。
「電話、出てみろや」
次郎がコオロギに電話に出ろと言い、コオロギはそこでまだ鳴り響く自分の携帯に気付く。
このまま逃げ切れるか考えたコオロギだったが、どうみても勝ち目のないことを悟ると仕方なく震える手で通話ボタンを押す。そこから聞こえてきたのは男の声。
「だだだだ誰なんだよ」(俺の番号を知ってる奴なんていないはずだ。この電話は葵ちゃんだけのためのものだ)
かすれた声を出すコオロギは、葵の方に助けを請う目を向けるが、葵は次郎の後ろに隠れていて、その姿は確認できなかった。