メインクーンはじゃがいもですか?
「とりあえずおまえは乗れ」
葵の頭をでかい手で掴む霧吹は、バスケットボールを掴んでいるような手つきで頭を掴み雑に車に押し込んだ。
そのまま後部座席に荷物を積み入れる要領で突っ込み、自分も滑り込む。
次郎も急いで運転席に戻ると、コオロギが電話に出る前に一足お先に車の屋根に落ちてきた葉を静かに振り落としながら、あっというまに車は滑り出した。
出遅れた修は、気付いた時にはコオロギと二人、その場に残された。コオロギは手に持った電話そのままただ茫然と走り去った車を目で追っていた。
「あ、あんたも葵ちゃん狙いなのか?」
声が震えているコオロギは、頭をさすりケツを抑えながら怖いやつが一人減ってよかったとばかりに修に話しかけた。
話さないといられない状態であったとも言えるが怖い者知らずな奴は頭が単純にできている。
「お前と一緒にするな。お前が何を考えてるのか知らんがお前よりはるかに俺の方がいい男だ」
修の頭の先からつま先まで目を滑らせるコオロギは、納得するしかなかった。
コオロギはどちらかと言えば、じゃがいもに切れ目を入れたような顔だ。そこにとってつけたような鼻、たらこのような唇は、不細工の代表選手とでも言えようか。不細工選手権があればシードを手に入れそのまま決勝戦まで行ける代物だ。
「葵ちゃんをものにしたいならさ、おおおおお俺と手を組まない?」
コオロギは修に蹴られたことはさておき、ここは仲間が必要だとばかりに汚い笑みを修に向けた。怖いモノしらずとはこういうことだ。相手の力量が分からない。
霧吹は葵を連れて去っていった。この男は置き去りにされ、見た感じ仲がいいとは思えなかった。
こいつをこっちに引き込めたら、もしかしたら勝ち目はあるかもしれないと、体育会系の考え方、『勝負』にすり替えて考えた。
無知は幸福とはこのことだ。
おもむろに携帯を手にすると、GPS機能を開き、修にそれを見せた。