メインクーンはじゃがいもですか?
「あんな清純そうな子なのに、酒が入るとこれだよ。ははは将権が一緒になったらきっと振り回される。いつもは君が女を振り回す方だけど、これと一緒になったらきっと将権は困るだろう? 面白くなるよね。それ、見てみたいなあ」
「くだらねーこと言ってねーでさっさと誰だか教えろや。おまえにはいっさい関係ないことだろ」
頷く霧吹に、「だから、関係なくないんだよね、もう」
爽やかな初夏の朝の空気のように綺麗に笑う修の顔には、完全なる悪意が宿っていた。
「俺だって願い下げだぞこれは。どうしようもない女だ」
「ははは。もっとどうしようもないのもいるじゃん」
「知らねえよ」
葵の部屋への侵入未遂で次郎に見つかったこと、スナック赤パンツでどうやったらモノにできるのかを相談していた霧吹は、そんなことをしなくてもよかったとここで後悔した。
「で、だから犯人は誰なんだよ」
知ってるけどな。ということはとりあえず伏せ、知らないから教えろという風に場の空気を持っていった。
「だからあ、君もけっこうしつこいね。それは教えないよって言ったじゃん。それに、将権が葵ちゃんと一緒にならないなら俺が直接葵ちゃんに言っちゃうよ」
それをされたら俺に五千万が入らねーじゃねーか。と心で反論するがお顔には綺麗なポーカーフェイスを池に蓮の花が咲くごとく穏やかに浮かべた。
「それからもう一つ」
修は髪をかき上げ、スーツのジャケットの着崩れを正す。
「葵ちゃんを2回もはねた犯人が、お前だってことも言おうかな」
クソが。そこんところはどう切り込んでいくか目下の問題として残しておいたのに、こいつがそれをもペロッとあいつにしゃべったら俺の五千万は泡のように消えてくじゃねえか。
霧吹は修同様にあからさまに嫌悪感丸出しの顔をした。