メインクーンはじゃがいもですか?

 そのまま何も言わずに葵の横を通り抜けると、「来い!」

 両手をジャージのポッケに突っ込んで立ち、犬でも呼ぶかのように自分の子供を呼んだ。

「ちょっとやめてよ、犬じゃないんだから。何よ今の。仮にもあんたの息子でしょうが」

 子供を追って玄関に入ってきた女の人が一人。

 霧吹と同年代か、少し若いか、キレイめファッションに身を包んだ大人な女性が、

「将権、やっと出てきたんだってねぇ。連絡の一つもくれたらよかったのに。まあ、連絡来ても行かないけどね」

 懐かしむように顔を緩めた。

「おー、もう二度とごめんだけどなぁあそこはよ。クソつまらなくて仕方ねえよ」

「どう? 二年見ない間に将太(しょうた)大きくなったでしょ」

「子供の成長はやっぱあれだな、早いな」

「そうよ、朝起きたら大きくなってるって思う時もあるのよ」

「言い過ぎだろそれは」

「本当よ、そう思うんだから」

「はいはい」

 子供の頭をぽんぽんと叩くと、「気をつけて行ってきな」と言い、足元にいる将太に、「じいちゃんとこ行ってこい」と言い、将太が走って行くのを見届けるとその大人な女性とハグをした。

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