メインクーンはじゃがいもですか?
ウェルカム トゥ マグロ漁船
【ウェルカム トゥ マグロ漁船】
三郎は修と共に夜の川崎港にいた。
そこらへん一帯にはお魚の匂いがこびりつき、不快感Max。波止場に波が打ち付けられる水の音しか聞こえない。
港に建つ倉庫の中は真っ暗でどこに何があるのか分からない。その寒さからいって冷凍物の何かを保存しているのではないかと想像がつく。
水の音に紛れるように音もなく滑らかに修の白いリムジンが港に横付けにされ、運転手が周りに気を配るように降り、無駄のない動きで車のドアを開けて外に出た。そして主をの居る場所へと歩を向けた。
三郎は修の後ろを歩き、目的の倉庫へと静かに向かっていた。
「で、どのくらいで来るって?」
「あと30分そこそこで到着すると」
「そう。じゃ、時間はまだあるってことだね」
指を鳴らしながら首をカキっとやって、4番倉庫のドアを指示し音を立てて開けさせた。
倉庫の中には一人の男が手足を縛られた状態で無様にも転がされていた。
口は何の拘束もないのでどんだけでも声が出る。
「誰かー、誰かたすけてー」と何時間も声を大にして叫んでいたのだろう。今では声が枯れ葉のように枯れていた。
入り口のドアが開いた瞬間にころりんと体を転がし、明かりの入ってきた方へとその巨体を向けるとそこには人影。
「おい! 助けてくれ! 頼む。こっちへ来てこれ取ってくれ!」
入ってきた人影が修と三郎の姿だということに気づけない。外の明かりを受けているので真っ黒い影にしか映らないのだから仕方もなかった。
「助けてって? 俺にか、あ? こら」
三郎が指をばきばきと鳴らして獲物を捕らえるように一歩前に出た。
「このヒモを取ってくれよ。なんか知らないけど俺悪くないし。頼む。これ取って……え、俺にか? って、なに」
体を揺すって縛られている手足のヒモをアピールしたところで耳に届いた意味不明な言葉の真意が分からずフリーズした。
「それは無理な話だなぁ。俺は最大限に怒り狂ってる」
そんなやりとりを聞いていた修は楽しそうに暗闇の中でタバコに火をつけた。その口元は不気味に笑っていた。
オレンジ色の光だけが小さく光り、修の顔が闇に浮かんだが、一瞬の後、消えた。