メインクーンはじゃがいもですか?
「なんだよ、これはなんだよ! なんなんだよ。お前だって」
男は、こいつらが自分を助けにきたんじゃないんだと分かると、気がおかしくなったように再び叫びだし、体をこれでもかってほどに揺さぶり自力でほどこうと試してみた。
「バカは扱いやすくていいよなぁ」
修は笑いながら男に言うと、その男はぴたりと動きを止めた。
「まさか。やっぱほんとにおまえ、あの、だってそんな。俺と手を組んだんじゃないのかよ」
不気味に笑う修の顔は、楽しくて仕方ないといった面持ちだ。
「そうだよ、手を組んだけど、おまえをこうしないってことは約束していない。それに、俺が無償で何かをするなんて、そんなこと思う? 三郎?」
「一ミリも思わないっす。修さんが無償で何かをするなんてまずありえませんね」
「……そこまで言い切られるとちょっと複雑だけど、ま、そういうことなんだよね、アホマッチョ君」
「アホマッチョ?」
三郎は修と男とを交互に見る。しかし三郎は、
「こいつの後ろ姿はなんとなく例の奴に似てますが、こんなマッチョだったかはちょっと」と耳打ちした。
「うん、わざとサイズの合わない服を着てごまかしてたんだよ。こいつで間違いない。証拠の電話も見たしなぁ? コオロギ」
騙したのか! と罵声を上げるコオロギに、
「お前が葵ちゃんを騙くらかして、自分のものにしようとしたんだろうが。そのやり口は汚ないよね。誰だか分からない奴からの電話やメールで怖がらせ、不安にさせ、そこでひょいと出て行って、俺が守るとか反吐がでるような事を言い、自分に好意を向けさせようとする、その根性が気に入らないかな。男として無理。だって君、顔も頭も悪いのに性格も不細工だったら救いようないじゃない。だから僕が救ってあげようかなって思ってね」
自分で言ってて気分が高まった修は、吸ってたタバコを地面に投げつけ、コオロギの襟首をひっつかみ、無理やりに座らせた。