メインクーンはじゃがいもですか?
「だからよ」
黄色く光る修の目は、野良猫のようでもあり、将修のようにもみえる。
「お前を立派な『漢』にしてやるよ」
にたりと笑う修に、あ、ボコられるんじゃないんだと知って力が抜けるコオロギ。
「まずは修さん、俺にまず一発ぶん殴らせて下さいよ。これじゃ気がすまねえ」
三郎は今だにコオロギにバカにされたと思っていた。コオロギはそんな気は全くなく、自分は全部分かっているんだよってことを誇示したたかっただけだ。それだけのことなので全く見たことのない三郎が自分にキレているのがどうも納得がいかなかった。
「まぁまぁ、三郎、それはもう忘れろや、そして俺に任せて。こいつはバカだからおまえが思っているようなことは全く考えてなかったと思うし」
ぽんと三郎の肩に手を置いた修は、その一言で三郎を黙らせた。
目だけをコオロギに向け、苦虫を噛みつぶす思いの三郎だが、修には逆らえない。
「漢にするってどういうことだ! 俺をどうするんだよ」
コオロギが話を長引かせてここからの脱出方法を考える為に、割って入った。
「葵ちゃんを自分のものにしたいって言ってたじゃない」
「……そりゃしたいけど」
コオロギは詰まっていない頭で多角的に考えてみた。しかしながらプランAしか持ち合わせていなかったコオロギにはそれ以上いい案は浮かばない。
「だろ。よし、じゃ俺が一肌脱いでやっから、大船に乗ったつもりでいろ」
修はその綺麗なお顔をじゃがいもフェイスのコオロギに向けた。顔の大きさもまとまり具合も何もかもが月と鼈だ。
「大船って」
「おお、そうともよ! 大船に乗ったつもりでいろ。安心してろや、1年そこそこでお前は大いなる『漢』になれる」
両手を広げて言い放つ修は、霧吹が若干被るということを、三郎は自分の胸の奥にぐっと押し込んだ。