メインクーンはじゃがいもですか?
「修ちゃんよ! こっちこっち!」
訛った声で修を呼ぶ声が暗い海の方から聞こえた。
その声に反応し顔を上げる修は手だけで挨拶した。
ポフーーーーー・・・・・。。。。。
汽笛のような音が聞こえ、そっちに目をやったコオロギの顔からは、さすがに血の気がと引いていった。
そこで目にしたものは船だ。
見るのも恐ろしい暗黒の闇に浮かぶ怖ーい海賊船のようなものじゃなくて、
『年期入ってますから自分』
と言わんばかりの改造工作船だ。
船内にはいかつい漁師さんが数名、修に向かって大きく手を振っていた。懐かしむ顔を見せる海の男たちと修はこの出会いが初めてではないと物語っている。
船を停めて、上陸した黒いおじさん。それがこの船のキャプテンだ。
「修ちゃん、毎度どうもね、助かるよ」
「いやいや、今回も宜しく頼むよ」
修は運転手に合図すると、運転手は大事そうにアタッシュケースを運んできた。
「じゃ、ひとつそういうことで」
運転手からアタッシュケースを受け取ると中身を確認するキャプテン。
「お。今回はなんか多くないか? おまけってか? これだと……2年かな?」
「1年でいいよ。残りは好きに使ってくれ」
「ってことはさね、こいつは1年後に戻すってことで?」
「そういうことだ」
「……っはー。めんずらしいね。海、しけなきゃいいけどね」
二人は、肩を揺らして笑うと、修はおもむろにコオロギを指差した。