メインクーンはじゃがいもですか?
「これね、マクロさん」
キャプテンの名前はマクロ。キャプテン・マクロは指さされた方を向く。
「ほほう、これはまたいい感じの体格だ。こっちの方面で大いに活躍できそうだーよ」
コオロギは体を強ばらせた。
「まさか」首を横に振る。何度も振って現実を否定した。
「漢になるってことは生半可なことじゃ出来ないよね。ま、せいぜい頑張って男になってきてよ」
修はキャプテン・マクロに目で合図した。
「じゃ、行くか」
海焼けで真っ黒くなった顔に深い皺は男の証だ。勲章だ。
海の男の一人がコオロギの乗った一輪車を三郎と交代して押した。
「ちょと待ってくれ! どういうことだ!」
と顔面蒼白で答えを求めるコオロギに、
「お前はこれから一年、この船に乗ることになる」
修はコオロギの悲しむ目に楽しそうに言った。
「これってらららららら……拉致」
コオロギは頭をフル回転させて助かる方法を考えた。
「物騒なこというもんじゃないよ。将権じゃあるまいし、僕がそんな手荒な真似するわけないじゃない。そうでしょ、三郎?」
「……へ、へい」
「そういうことだ、わざわざ川崎港まで出向いてくれたんだから感謝しろや」
マクロを目で合図し、コオロギに目で諭す。
「どどどどどこにやるつもり……ってまさか、まさか」
「そうよ、お前はこのマグロ漁船に乗っかるんだよ」
これが言いたかったとばかりにいたずらを仕掛けた子供の顔になる修に合わせて三郎もざまーみろと鼻で笑う。