メインクーンはじゃがいもですか?
「で、おまえが挨拶暗いのそんなことでわざわざ来るとは思わねーけどな」
「そうなんだよね、あ、そうだ、残念だけど三千万も一緒に船に乗ってるって話、耳に入ってるよね?」
「相変わらずうるせえやつだな」
五千万という値段がついていたはずだが、やはり確実に修はそれを最後まで聞かされることはなかった。
犬山のおやじが言ってないと思うと霧吹は少しばかり勝ち誇った顔をした。ほら、思惑通りだ。まだまだプリプリの青いケツだ。
金ごとごっそりマグロ漁船に乗せ込んだってことからして、修はもともとこの勝負に勝てばなんでもよかったと見える。霧吹の怒る顔が見たかっただけだ。なんでもいいから霧吹に勝ちたかったってことのみだ。が、あまりがっかりした顔を見せない霧吹にちょっとだけ不満を募らせた。
「21そこそこの男をずっとマグロ漁船には乗せておけないでしょ? そう思わない?」
修は真面目な優等生ぶっているが、自分がマグロ漁船に乗せたことは、そう、完全に棚上げだ。
「一生いりゃぁいいんじゃねーのか、あいつは。あれだよ、おまえもマクロさんと一緒に漁船でコロンビアまで行きゃあよかったじゃねえか」
「ふん。何言ってるのか分からない。ま、いいけど。でね、葵ちゃんいるでしょ?」
「またそれか」
「いいからさ、早く出してよ。そこに隠れてるのは知ってるんだからさ」
犬山を追って玄関まで来た葵は修の声が聞こえた為、死角になる角のところに、ひっそりと身を潜めていた。
霧吹はそんな葵に、来いと手招きする。