メインクーンはじゃがいもですか?
恐る恐る顔を出す葵は、
「あ、どうも、こんにちはぁぁ」と小さい声で挨拶した。
「何、そんなに怖がらないでよ。将権と違って僕は何もしないから安心してこっち来てよ」
「何聞き捨てならねーこと言ってんだよ」
「ぼっちゃん、そろそろ時間が」
運転手が腕時計に目をやり、時間が無いことを告げた。
「あー、時間が無いからちゃっちゃと言うね。葵ちゃんさ、こいつには気をつけたほうがいいよってことは前にも言ったよね。気を抜くと襲われるからねって。でね、三ヶ月もすれば僕は日本に戻ってくると思うけど、それまでに君たちがどうこうなってなかったらさ、まあ、ならないと思うけど」
「……はあ」
「僕と一緒になろうね」
無茶苦茶なことをサラリと言う修の目は本気だった。突拍子もない日本語が耳に入り込んできたため無言になっている葵に修は、「そういうことだから考えといてね」
究極にして最高級の笑みを葵だけじゃなく霧吹にまでも見せつけた。
「ことごとくくだらねえな。早く去れ。おい待て、酒乱は嫌いなんじゃなかったのか?」
霧吹が葵の酒乱っぷりを持ち出した。当の葵は『はて、何を言ってるんでしょうか』と我関せず。
「飲ませなきゃいいだけじゃん。簡単簡単」
「だから、お前にはき……」
「しー! それ、葵ちゃんに言ったら将権が犯人なの、言うからね」
しれーーーっと末恐ろしいことを飄々と(ひょうひょう)言う。が、よーく考えれば小学生の喧嘩のようなもんだ。お前が言ったら俺も言うみたいな低レベルの争いだ。