メインクーンはじゃがいもですか?

「若、到着しました!!!!」

 次郎が間一髪間に合った! とばかりに、ふーーーーーっとなっがい溜息を鼻から出した。このあと時間が万が一できたら若はこれ以上のことをしでかすに決まっていると今までの経験から想定した。

 正気に戻った後部座席の二人、葵の酔いも冷める方向に進み、自分がどうなっていたのかも分からない。

 霧吹は、暴れん坊になった背中の虎をどうどうとなだめ、大人の対応を試みる。

 後部座席のドアが次郎により開かれる。葵が先にでて、霧吹が後ろから出る。三人の中にはやや何とも言えぬ空気が流れ、流れの悪い下水道みたいに嫌な感じになる。

「霧吹さん」

 まだほのかに酔いの回っている葵が、流れの悪い下水道を吸引器で吸い取り流れが若干よくなった。

「さっきの、本気ですからね。私、ママさんにはああいうふうに言われましたけど、でも、そんなの関係ないと、」

「酒が抜けてから言え」

 言葉を遮り葵の頭を軽く叩いた霧吹は先に玄関に入った。

 葵の背を少し押し、どうぞと招き入れる次郎はどうしたらいいのか分からない表情を浮かべていた。

 靴を脱いで家に上がった時には、霧吹は既にリビングに消えて行くところだった。

「葵さん」

「はい?」

「いや、やっぱいいっすわ。じゃ、おやすみなさい」

「おやすみ、なさい」

 何時間赤パンツにいたんだか定かじゃないが、もう夜もとっぷり暮れていて、気付いた時にはここに到着していた葵は、車の中で自分が霧吹にしたことなど……



 まったく覚えていなかった。


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