メインクーンはじゃがいもですか?
「ま、いいわ。今のあんたには何を言っても無駄だろうから、1年半いない間にさ、いろいろ考えなよ。どの選択があんたに一番ふさわしいかってのが分かると思うけど」
「今から帰れば会えますよね?」
まだ家にいるはず。きっとうちへ帰ったはず。
「無理、成田へ向けて行っちゃった」
「そんな。だってさっき赤パンツに。何時のフライトなんですかっ!」
「こっちの仕事に素人が口挟むんじゃないよ。おまえみたいなオムツの取れないガキには分からない世界なんだよオチビちゃん」
葵の頬をびろーんと引っ張る美紀子は、いじめっ子の顔になっている。
痛い痛い! となんとか手を払いのけ、ほっぺをおさえていると、若い衆に送ってってと命じている声が聞こえた。
「あのさ、別に将権が誰とどうこうなろうともう関係ない。私は修とうまくやっている。案外いい奴だから。でもね葵ちゃん、あれを好きになるときっと後悔するよ」
暗い一言を言い残し、美紀子はさっさと事務所の奥に消えて行った。
しかし、それが本心なんだか嘘なんだかは、その二枚舌から汲み取るのは難しかった。