メインクーンはじゃがいもですか?

 葵は野兎組の軽自動車の荷台に荷物のように積まれ、霧吹邸へと運ばれた。

 到着すると挨拶もそこそこに車は走り去り、家に入るとそこには三郎が待ち構えていた。

「おかえりやっしゃい」

「……どうも」

 何も言ってくれなかったこの家の若い衆に敵意を覚えるが、居候の身だった自分にそんな権利は無い。

「葵さん、帰って来てすぐにで申し訳ないんですけど、荷物まとめてもらえやしませんか?」

「荷物まとめるって? なんで?」

 どういうこと?

 三郎曰く、もう既に問題は解決したんだから、ここに葵がいる必要性は無くなったということだ。従って、ここを出て、以前のように一人で生活をしてもらいたいという、至極全うではあるが有り難くない申し出だった。

 本日何度目かのげんこつを食らった気分の葵は、肩をどーーーーーんと落とし、力なく「はい」と言うと、のろのろと靴を脱いで家に上がった。

 霧吹の部屋の障子はぴしゃりと閉められ、その中からはなんの音も聞こえなかった。

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