メインクーンはじゃがいもですか?

 廊下を抜け、左手に見える『さながら日本庭園』を横目に、カッポーン・カッポーンと今だ等間隔にたなびくししおとしを耳に受け、最初にここで目覚めた時のことを思い出した。

 最初は次郎がすーーーーっと襖の間から顔を覗かせた。

 その怖いお顔は忘れもしない。

「はぁぁぁぁぁぁぁ」

 溜息を何発かかましながら、スーツケースに持って来た荷物を押し込める。ボストンバッグにもその他を詰めて、襖を……

「お持ちしやす」

「あああ、びっくりしました」

「すいやせんね」

 外で待機していた三郎が葵のスーツケースを重そうに引きずる。

 霧吹は軽々と持ち上げてたなぁと、三郎のずんぐりむっくりで取り柄の無い後ろ姿を恨めしそうに睨む。

 三郎は知ってかしらずか、身震いし、スーツケースとボストンバッグを足早に車に積んだ。

「あ、あの。組長さんに挨拶を」

「あ、いいっす。組長は今修行中の身ですからこっちにいないんすよ」

「なんの修行ですか?」

 眉間に皺が寄る。修行ってもしや、拳銃の撃ち方とか、もしかして人の殺め方とか???

 おぞましい考えに背中を通り越して背骨が震えた。

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