メインクーンはじゃがいもですか?
「葵さん到着しました」
その声に顔を上げた葵は、とあるアパートの前にいることに気付く。
「何ここ?」
知らない家ですけれども? どこなんだろう。
「あ、今日から葵さんここに住んでください」
「なにそれ? 聞いてないですし、私ここのお家賃とかぜんぜん分からないし」
「あ、そのへんは大丈夫っす。犬山のおやっさんの承諾済みっすから安心して下さい。ここはセキュリティーもしっかりしてますし、あのクソ野郎ももう来ませんから」
……あぁ、あの、クソ野郎ね……
車から降りてアパートを見上げる。
『アパート白山』会
「アパートしろやま? うん、名前はなんかいいかんじ」
葵はうっすらと口元を上げた。綺麗なネーミングに心なしか嬉しくなった。
「いや、違いますね。アパート、ハクザンカイっすね」
「ハクザンカイ? 会がどこにあるわけ?」
「ほら、アパートの看板の外に申し訳程度に一文字出てますでしょ?」
指さした三郎の人指し指には、きんきらきんに輝くゴールドの指輪がこれでもかと光を輝かせていた。
指された方をよく見れば、確かに生き別れした『会』が、なんとか寄り添うかたちでマジックで書かれている。
横にいる三郎は生き生きとしているが葵はがっかりだ。