メインクーンはじゃがいもですか?
「ってことはここはもしかして」
「はい、うちの分家の筋のとこっすわ」
「てことは、霧吹さんもここに来たりするんですか?」
淡い期待を込めて聞く葵の視線を斜め下に流し落としながら、
「い、いや、若はここには来ないっすね。一度も来たことないっすわ」
「そう……なんですかあぁぁぁぁ」
「元気だしてくださいよ葵さん、ほら、ここのセキュリティーシステムの説明でもしましょうかね」
とりあえず半笑いで笑顔を保つ葵は三郎に部屋まで案内された。ここに住まわせてくれるってことは、まだ霧吹と繋がっていられてるってことだ。と、考え方をポジティブサイドにシフトチェンジした。
だから例えばここで何か問題があったらすぐにここの人たちが出て来てくれるってわけだ。
と、葵はそんなうっすらと繋ぎ止める術を考えていた。
「ここっす」
二階のど真ん中の部屋。普通、角部屋とか用意するもんじゃないのかな。と、小首を傾げてみる。
中に入るともう一人、見知らぬ誰かがいた。
「あ、どうも四郎です」
「四郎はセキュリティー担当なんで、あんま表には出ないんすよ」
三郎がさりげなく紹介した。
「ここは盗聴器や盗撮用カメラのような類のものは一切ないですね。コンセントも確認しましたし、細かいとこまで調べても異常無いんで。葵さんが持ってる携帯は若のですから、引き続きそれを使ってください。ということですので」
「え、それって霧吹さんからですか?」
「は? いやおやっさんからです」
ぺこりと頭を下げた四郎の口から出た、『若』という言葉を久しぶりに聞いた気がする葵は、懐かしさがこみ上げてきた。が、希望をことごとく潰され、さすがに少し心が折れかけた。