メインクーンはじゃがいもですか?
3度目の正直
【3度目の正直】
起きたらそこは見慣れない天井だった。
葵は無条件に飛び起きた。
狭い部屋には、まーるい木目のちゃぶ台がひとつと三段ある白いカラーボックスが二つ。目の前は玄関になっていた。その横に台所。ベッドだけは自分のものだ。
壁にはいつの時代のだか分からない、水着のおねえちゃんがビール片手に浜辺で笑ってる80年代テイストのポスターが1枚。
そうか、昨日からここが私の新しい家になったんだっけ。知らない部屋が自分の新しい部屋になっていたんだってことを思い出して落ち着き胸を撫で下ろし、キッチンと呼べないキッチンへのそりと歩く。
銀色の昔ながらのやかんが一つだけ置かれていた。台所の横にある小さな冷蔵庫を開けると、いろいろな食材に飲み物の類が入れられ、家から出なくても何日間か生活ができるようになっていた。
せっかくなのでミルクをやかんで温めてみた。
夏だけどされど夏なだけに温かいものを飲めば、このじっとりした汗も引くってもんだ。寝汗をかいていた葵は温めたミルクをゆっくりと飲み、熱いシャワーを浴びた。シャワーも浴びればシャキッとする。パンと頬を打ち『おっしゃ』と気合いを入れた。
部屋の掃除や荷物の片付けをし、昼も回った頃、隣の部屋から賑やかな音楽が聞こえてきた。
その手の音楽からして、ドンパチ映画かなんかだろうか。拳銃の撃たれる音にドスの効いた大阪弁が聞こえてくる。