メインクーンはじゃがいもですか?
またiPhoneがメールのお知らせを入れてきた。
『そんなに暗くて狭い所に一人じゃ危ないじゃないですか。僕が行くからそこにいて、動かないで』
「え? ちょっと......どういうこと」
走るのをやめて前後左右を確認し、頭上も見上げたが誰もいない。
汚いビルの間に申し訳なさそうにはためく洗濯物が数枚。あとは何も無い。
ダメだ、逃げよう。
逃げなきゃ!
路地裏は狭くて汚くて怖い。
でもあいつはもっと怖い。
あと少しで路地から抜けられる。
大学から逃げて来ているから、かれこれもう1時間弱は逃げていることになる。
路地を抜けたら地下鉄に乗ろう。電波さえ入らなければ、メールだってこないはずだ。
暗い路地の向こうには明るい光。
『早くこっちにいらっしゃいよ』
と言われている気がするし、そこに出たらもう、なんとかなるという気にさえ思えてくる。