メインクーンはじゃがいもですか?

「霧吹さぁん、フルーツ食べたぁいなぁ」

 腐る寸前のフルーツ並みに甘ったるい声でフルーツをねだる、すだれ女子。

「フルーツ? おう、頼め頼め! なんでも好きなもん好きなだけ頼めや」

 羽振りの良さだけは昔から天下一品だ。小学生の時から仕込まれた『遊び方』を今でもきっちりと守るところといい、キップのよさだけは気持ちがいい。

「でもあれだな、やっぱよ、これだな、それだよ、なあ?」

 主語も述語も何もない。要は、やはりしゃばは甘い蜜だらけだとでも言いたいのだろう。

 なんせ、お箱の中では有無を言わさず毎朝6時起床だから、毎朝6時消灯の霧吹には信じられない生活だったに違いない。

 久しぶりの酒のおかげさまで、その端正なお顔がほんのり桜色になった霧吹は、目がトロリンとなってきた。

「おぅぁ、将権(しょうけん)いるだるぉぁ」

 のれんをくぐり抜けてきたダンディーなおじさまは、そのままVシネに出られそうな格好だ。

 お高い万円のヤクザスーツの光沢は、玉虫かなと思わせるふしもあるが、また違う意味で目を引くものがある。

 間違っても昼間は着られない代物だ。

 そしてポケットチーフは巣鴨にはふさわしくなかった。

 そこに鉄板入りの時代錯誤な靴、武器にしかならなさそうな杖は、要注意人物の代名詞だ。

 巣鴨にふさわしいのは赤いポケットチーフなんかじゃなく、赤いパンツが決まりであり、鉄則なはずだ。

< 26 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop