メインクーンはじゃがいもですか?
「若、すいません、ちょっといいっすか」
次郎が霧吹から電話を受け取り、中を手際よく調べ始めた。
「葵さん、これ、誰かに渡したり貸したりしたことあります?」
「え? いいえ。ないと思いますが」
「例えば学校でトイレ行くときとか机に置いてったりしたことは?」
「大学でですか?んー、あったかもしれないですけど、覚えてないしわかりませ……あ、そういえば休講のお知らせを見たあと大学を出る前にお手洗いに寄って、そこに携帯忘れてしまだたのを大学を出たあとに思い出して取りに行きました。あってよかったなーって思ったことはあります」
「それですね」
「それですねってそれがなんなんだよ」
霧吹が携帯を操作し続ける次郎に苛立つ。
「これですよ」
次郎は霧吹と葵に画面を見せた。
「これって」
「そうっす、GPSっす」
「……スカイラインか?」
2年間ほど浦島太郎状態だった霧吹は、それが日産スカイラインじゃないという事実を飲み込むのに約2分ほどの時間がかかった。
放っておくと、スカイラインGTーR、またの名をヒツジの皮を被った狼の話に2時間ほど費やしそうな勢いだったので、次郎はさささっと流し、話を葵に戻した。
あきらかにぶーたれた霧吹がそこにいたが、あえて見て見ぬ振りをすることにした。