メインクーンはじゃがいもですか?
「てぇことは、どっかの誰かがこいつを勝手に動かしたってことか?」
「へい、そうなりますね。葵さんがトイレに電話を忘れた時にでも細工したんでしょうね」
解除します。と言い、GPS機能を切ろうとした次郎に待ったをかける霧吹。
「そのままにしとけや。いい考えがある」
にやりと笑う霧吹は、素晴らしくいい顔をしている。
葵はそんな霧吹の笑顔にどきりとするが、すぐに視線を下に落とした。
「学校行く前にお前の部屋に寄る」
リムジンに入り込んだ霧吹は、隣に座る葵に声をかけた。
「え? うち?」
学校って。高校と勘違いしてるのかな? 大学なんだけどなとふつうのことを思う葵だが、これまた霧吹と次郎だって、真面目だ。
と、普通のことを心の中で疑問に問う葵だが口にするのはやめた。
「まず、こいつは充電器にぶっさして置きっぱなしにしろ」
葵は部屋に入ると言われた通りに卓上充電器に電話を乗せた。
このまま葵の電話はしばらく誰もいない自宅に置き去りにされることになり、舎弟の一人が留守番をするということで話がまとまったが、霧吹が何を考えているのか、当の葵にはまったくもって検討もつかなかった。