メインクーンはじゃがいもですか?
そのビルの4階が目的地の事務所だ。
『勇気の印』を詰めたアタッシュケースを次郎が持ち、霧吹は相変わらずセンスの悪い白いスーツ。
阪神タイガースを思わせる虎柄のネクタイ、夕方で太陽も消え入りそうな時分にもかかわらず、太陽に吠えろのようなサングラスをし、踵を鳴らしながら階段を上がっていた。
その後ろを葵が置いてかれないようにぴったりと着いてきた。
「ちょっと霧吹さん、なんなんですかここは。なんかすでに怖いんですけど」
葵はこの雰囲気のちょっと違う地域に危険な空気を感じた。
「なんてことねービルのなんてことねー仕事だ」
答えの無い答えを突きつけ、次郎が真っ黒いドアを開け、中に入る。
そのあとに二人も続く。
ビルの中は真っ白で統一されていた。
壁も床も置いてあるものも全てが、白、白、白、白、真っ白。
霧吹がそこに立つと、髪の毛以外どこにいるのか分からなくなるくらい、白一色の部屋は、蛍光灯の光も手伝って、目がしぱしぱする。
あぁ。だからサングラスをしていたのかと気付く葵は、知らないうちに目を細めて鼻の上に皺を寄せていた。こんなことなら先に言ってくれたらサングラスの一つも持参したのに、何一つそんなことは言ってもくれなかった。