メインクーンはじゃがいもですか?

「霧吹の若旦那、お待ちしておりました」

 恭しく頭を下げる野兎組の若い衆。

 当たり前のような横柄な態度の霧吹は、案内役の若い衆の後を黙ってついて行く。

 葵も着いて行こうとしたが、若い衆の一人に止められた。

「お嬢さんはここでお待ちください」

 野兎組のデブッチョが一番近場の席に案内した。

「え、あのでも」

 先に歩いて行く次郎と霧吹を目で追う。その目には助けてくれというSOSが浮かんでいるが、二人にはそんな合図は見えていない。

「黙ってそこに座ってろ」

 振り向きもせずに言い捨てる霧吹は言い終わるとさっさと部屋へ消えて行った。アタッシュケースを持った次郎もそれにならう。

 さ、どうぞと促され、言われた通りにそこに座って待つことにした葵の後ろにはおっかない顔をしたお兄さん方5人が突っ立って、椅子に座る葵を見下ろしていた。

 兎になったのは葵の方だ。

 虎の檻に突っ込まれた兎のような気分になり、落ち着かなかくて仕方ない。しかもあたり一面真っ白で、目は相変わらずしぱしぱしている。






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