メインクーンはじゃがいもですか?
「葵ちゃんだったね、修がへんなことをして悪かった」
「いえ、別に」
思い出したように手の甲を服にこすりつけた。それを見て野兎はおかしそうに目を細めた。
「ちょっと聞いてもいいかな? またなんで君のような子が将権と?」
「ええと、その、あの、大学でちょっといろいろありまして、犬山の叔父さんに相談したところ」
「なんと! 犬山のところのお嬢さんでしたか! それはそれは失礼しました。いやいや最後に見たのはこんな小さい時だったのでね、君がその女の子だとは気づかなかった。これはこれは」
よー成長しなさったとばかりに親の目になり微笑む野兎はあからさまに警戒心をはずした。だから霧吹が連れてきたんだとようやく理解し、一人納得し頷く。
霧吹は自分が知っていることは相手も知っているだろうとばかりに何一つ言わないので、野兎としては後で次郎に聞くつもりでいた。
おい! と後ろの若いのに一声かけると、違う部屋へとまた場所を変えられた。
そこで、疑問に思っていたことを聞くことにした葵は、まずこのおじさんの名前から聞くことにした。
話をするのに、その人の名前を知らないなんてことはとても失礼だ。子供のころに会ったとさっき聞いたが当の葵にはそんな記憶がなかった。
「野兎 将修だ(のうさぎ しょうしゅう)」
消臭剤のようなへんてこりんな名前に面食らう。
どうやら野兎のおじさんはさきほどの修の父親であり、霧吹の親父さんとは違った意味での兄弟分ということだ。
どうして兄弟なのか理解に苦しむ葵は本当にこの場にふさわしくない。
よって、霧吹と修は幼なじみにあたり、子供の頃はよーく一緒に走り回ってどろんこになって遊んでいたという話を聞き、ちょっと笑ってしまった。
ただ、高校時代にちょっとしたことでもめてから仲が悪くなり、今ではお互いライバル視するようになってしまった。ということだ。
その内容までは話してくれなかったけれど、野兎のおじさんも霧吹の親父さんも、昔のように仲良くなってくれたらいいのにという気持ちに変わりはないらしい。
なんだかよく分からないけど、あの二人、なんかあると感じた葵は、泥沼に入り込まないようにしないとと考えを強く持ち、
くわばらくわばら。
と用心することにした。