メインクーンはじゃがいもですか?

「将権、さっきの子をその金と一緒に僕に渡しなよ」

 霧吹の対面に座った修は、挑発するような目で霧吹を捉え、肘を膝に置き体を前傾させた。

「いや、ちょっと待ってくださいよ修さん」

「口を挟むな次郎」

 次郎が割って入ったところで霧吹がそれを止めた。

 次郎は何か言いたげだったが、ちらりと修を睨み、すごすごと後ろに下がった。

「なんだそれ。どういうことだよ。またお前の突発的なおもいつきかよ」

 霧吹は森の熊さんもぶっ倒れるようなするどい眼光で修を睨みつけたが、そんなスナイパーのような視線を修は闘牛士のように勇ましく受け流した。

「高校のときのお返しだよ」

「また始まったか。二言目にはそれだ。お前もいい加減忘れろよ。それに俺は被害者だろ」

「まだそんなこと言ってる」

 嫌気が差すとばかりに霧吹は横を向き、自分の後ろにいる次郎にタバコを出せと手を伸ばした。

「で、答えは?」

 修は相変わらずの笑顔を顔に貼り付けている。

「ふざけんな」

「本気だけど。それが出来ないならこの話は無しだよ」

「もういいだろうその話は。時効だろうが完全に。それにおまえの方が悪い」

 また始まったと思う次郎は下を向き鼻から気づかれないように大きくため息をついた。

「そうはいかないよ。まだまだ許してない。これが最後だよ、どうする」

 修はソファーの背もたれに背中を預け、帰ってくるはずの模範解答を待つ。

 霧吹は修の目を見て放さない。

 そのままの格好でタバコに火をつけて、肺に深ーく一服入れる。

 たばこの煙を修の顔に向けて吐き、修はその煙を黙って顔に受け止めた。
< 98 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop