君といる夏
「今晩、永山さん家族とうちでご飯することになったの。買い出し行ってくるから、留守番お願いね」

母が出掛け、静まり返るリビング。

「――教職、取ったんだってね」

上京と引き換えの条件。デビュー以来、一度も帰省できない多忙のなか現実のものとした夏樹は、子供の頃から篤実家だった。

「数学と英語ね。なぁ、明日香。この6年で何人の男がおまえの上を通り過ぎていった?」

さらりと、まるで天気の話を振るようなノリで掏り返られた話題はあまりに唐突で、けれども途端に蘇ってくる過去。
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