愛色と哀色の夜
「お風呂には夏場しか入らないって…」
人影のない道をルイさんに先導されながら、わたし達は歩きます。
「…ほら、あそこの近くには川があるでしょう?ボクらは、そこを「おふろ」って呼んでるんだ」
わたしは、麗奈との話に花を咲かせながら歩いていました。
麗奈はとてもスリリングな生活をしてきたらしく、あの畦道で聞いた話よりも一層興味が湧きました。
「川がお風呂なんて…。………それじゃあ、夏場は毎日水風呂なんですか?」
わたしが問うと、麗奈は少し考えるような素振りで
「毎日…じゃなくて、2日に1回とかかなぁ…」
「2日に1回?」
うん、麗奈は一旦言葉を切ると、彼女の世界の決まりについて話してくれました。
麗奈の世界だと、食糧を調達する人や、物資を調達する人等役割があってそれを交代制でやっているそうです。
彼女はまだ幼いのでそういった役割に就いたことは一度しかないそうで、外の世界に出たこともその仕事を含めば今日が2回目なのだそうです。
「だから、実は結構楽しみなんだよね」
麗奈は悪戯のように笑うと、わたしの腕に自分の腕を絡めました。