愛色と哀色の夜
わたし達がたわいない話をしている中、ルイさんは黙々と先を歩いていました。
「ねぇ麗菓さん、『せんとう』ってどんなところ?」
わたし達はルイさんの案内で、最初に銭湯に向かうことになりました。
「銭湯というのは、お風呂に入るところなんですよ」
私の説明がわかりにくかったのか、麗奈は首を傾げて
「おふろに入るところ?」
「『銭湯』って言うのはね、沢山の人とお風呂に入るところだよ」
わたしが説明に倦ねていると、先を歩いていたルイさんが説明してくれました。
「麗奈ちゃんの入ってたお風呂は、誰かも一緒だったの?」
「う、ううん。…外の人達に見付かると大変だから、誰かが入ってる時は別の誰かが見張りをしてたよ」
「じゃあ、ひとりで入っていたのですか?」
うん、麗奈は頷くとルイさんを見て
「あとどのぐらいで着くの?」
弾んだ声で問う麗奈の横顔は、これから起きることに期待しているようでした。
「もう少しだよ」
答え、ちらっとわたしを見て
「麗菓ちゃん、麗奈ちゃんとは姉妹ってことでいいかな?」
恐らく「家族ってことでいいかな?」ということでしょう。異論のない私は頷きました。