愛色と哀色の夜

わたし達がたわいない話をしている中、ルイさんは黙々と先を歩いていました。

「ねぇ麗菓さん、『せんとう』ってどんなところ?」

わたし達はルイさんの案内で、最初に銭湯に向かうことになりました。

「銭湯というのは、お風呂に入るところなんですよ」

私の説明がわかりにくかったのか、麗奈は首を傾げて

「おふろに入るところ?」

「『銭湯』って言うのはね、沢山の人とお風呂に入るところだよ」

わたしが説明に倦ねていると、先を歩いていたルイさんが説明してくれました。

「麗奈ちゃんの入ってたお風呂は、誰かも一緒だったの?」

「う、ううん。…外の人達に見付かると大変だから、誰かが入ってる時は別の誰かが見張りをしてたよ」

「じゃあ、ひとりで入っていたのですか?」

うん、麗奈は頷くとルイさんを見て

「あとどのぐらいで着くの?」

弾んだ声で問う麗奈の横顔は、これから起きることに期待しているようでした。

「もう少しだよ」

答え、ちらっとわたしを見て

「麗菓ちゃん、麗奈ちゃんとは姉妹ってことでいいかな?」

恐らく「家族ってことでいいかな?」ということでしょう。異論のない私は頷きました。

< 17 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop