愛色と哀色の夜
暫くして、わたし達は銭湯に着きました。
「タオルとか必要なものは貸し出してるから、ゆっくり入っておいで?」
ルイさんはそれだけ言うと、必要な分のお金だけ預けて何処かへ行ってしまいました。
「…ルイさん、何処に行くのかな?」
麗奈は首を傾げ、此方を見ています。
「わからないです…。………それより行きましょう?ほら、手を繋いで?」
そっと彼女の手を握り、わたし達は中へ入ります。……するとすぐ、人のざわめきが聞こえて来ました。
「わぁ…っ」
思わず感嘆の声を漏らした麗奈は、わたしの手を強く握り
「すごい…!人がいっぱいいるよ!」
とてもうれしそうな笑顔で、わたしを見詰める麗奈は、とても愛らしく、いじらしい様子でした。
「人がいっぱいいるのは初めてですか?」
無邪気に喜ぶ麗奈にわたしは問い掛けます。
「うんっ!…早く行こうよ麗菓さん!!」
強く、強く手を引き、今にも走り出さんばかりに麗奈は先を急ぎます。
「ちょっ、こら…走るんじゃないの…!!」
「走ってないもーん」
いいから、急ぐ麗奈を宥めてわたしはふたり分の入浴券と貸し出し用のタオルとアメニティを一式借りました。