愛色と哀色の夜
「これで体を洗うんですよ」
言ってボディソープを手渡すと、麗奈は琥珀色に光る液体の入った小瓶を見て、
「…綺麗…」
恍惚とした顔で呟く麗奈は、それだけでいじらしく、その顔に何処か懐かしさを覚えました。
「さぁ、行きましょう」
はっとした顔でわたしを見上げた麗奈は、おずおずとわたしの手を握り花のように笑います。
「うん…っ!…えへへ、楽しみ!!」
今度こそ走り出さんばかりに手を引く麗奈を追い、わたし達は浴場へと向かいました。
「こっちですよ」
そのまま浴場を通り過ぎようとしたところで、麗奈を呼び止めます。
「…いらっしゃい」
「子どもふたり、これで」
番台の人に入浴券を差し出し、わたし達は脱衣場に入りました。
「…毎度ありー」
無愛想な声を背中に、手近な脱衣籠を選ぶとそこに借りたバスタオルやアメニティ等を入れ、
「此処で服を脱いで、それから浴場に行くんですよ」
「服を脱ぐの…?」
麗奈はきょとんとした顔で此方を見上げ、首を傾げました。
「…全部?」
えぇ、頷き自分の衣服に手を掛けたところで、畦道で見た腕の傷を思い出しました。