愛色と哀色の夜
十重二十重に出来た細かい傷が衆目に晒されることを恐れてか、麗奈はわたしの服を掴み
「…脱げないよ…」
消え入りそうな声で呟くと、麗奈は俯いてしまいました。
「…大丈夫、わたしにいい考えがあるんです。」
言うが早いか、わたしは番台さんのところへ行き、軽く耳打ちしました。
「終わりました」
番台さんはなにか釈然としない様子でわたし達を見ると、どこかへ行ってしまいました。
麗奈はその一連の顛末を見て、首を傾げています。
「番台さん、どこに行ったの?」
ふふ、含み笑うとわたしは麗奈の腕に素早く貸しタオルを巻き付けました。
「さぁ、これで大丈夫ですよ」
本来、タオルを浴槽に入れるのは禁止事項なのですが、こっそり番台さんに『お願い』して特別に良くして貰ったのです。
そのことを麗奈に言うと、彼女は目を丸くして
「へぇ…。…麗菓さんすごい!!」
純朴な眼差しで言われ私は柔らかく笑みました。