愛色と哀色の夜
「さぁ、行きましょう?」
タオルの巻き付いた腕を引き、浴場へと向かいます。
「うん…」
小さく頷き、おずおず付いてくる彼女を気に掛けながら浴場の扉を開きます。
…途端、人の賑わう音が私達を包み込みました。
「すごい…っ…」
麗奈は、ほぅ、と息を吐くと目を輝かせ
「すごい、すごいね!!」
興奮したように話す麗奈にわたしは思わず苦笑しました。
「ふふ、…まずは体を洗いましょう?」
腕を引き、手近な椅子に座らせると、此方を見詰めにこにこ笑う彼女と目が合います。
「どうかしましたか?」
「…ボク、初めてこういう場処に来たから、……すごいうれしい…!!」
春の陽のような、屈託のない純粋な笑みを向けられ、わたしはあまりの愛しさに彼女を撫でました。
「えへへ」
麗奈は擽ったそうに笑うと、澄んだ眼差しを此方に向け、
「擽ったいよぅ」
はにかむように笑った彼女は、私を急かしながらシャワーを出しました。