愛色と哀色の夜
暫く沈黙が続き、どちらともなく体を離しました。
「…上がりますか?」
顔を覗き込むと、彼女は熱で頬を微かに上気させ小さく頷きます。
わたし達は湯船から上がり、シャワーのある方へ行くとシャワーで軽く体を洗いました。
「あたたかかったですか?」
シャワーを掛けながら問うと、麗奈は頷き
「うん、すごいあったかくて、気持ちよかった」
その返答に、わたしは頬が緩みました。
脱衣所に戻ると、番台さんが不機嫌そうな顔で私達を見ていました。
「…なんか、怒ってるみたい…」
麗奈は私の背中に隠れると怖そうに顔だけを覗かせ
「怒ってるの…?」
違いますよ、わたしは言うと
「貴女は知らないかもしれないけれど、世の中にはどう頑張っても不機嫌にしか見えない顔の人がいるんです」
番台さんには聞こえないように言うと、わたし達はくすっと笑いました。