愛色と哀色の夜
岐路
*****


「グッドタイミングかな?」

突然低く深い声が響き、ボク達はそちらを見ました。すると、夜よりも暗いコートを着た人がそこにいます。

「あ、ルイさん」

ボクは笑い掛けると麗菓さんの手を強く握り、庇うように前に立ちました。

「やぁ、麗奈ちゃん。お風呂はどうだった?」

ルイさんは人当たりの良さそうな笑顔でボクに尋ねます。ボクは努めて笑顔で返し。

「うん、とても気持ちよかったよ。最高だった!」

するとルイさんは満足気に頷き、何事かを小声で言いました。ボクは一瞥すると、麗菓さんを見て

「…大丈夫?震えてるみたいだけど…」

ルイさんの姿を見た途端体の震えに気付いたボクは小声で麗菓さんに問います。麗菓さんは軽く頷くとにこっと笑いました。

「えぇ、大丈夫ですよ。…お気遣い、ありがとうございます」

目だけでお辞儀をされて、なにかこそばゆくなりました。

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