愛色と哀色の夜

「ところでふたりはお腹空いてないかい?牛乳だけじゃ足りないと思うんだけど…」

手元の瓶を見詰めながらルイさんは言うと何やら大きい物体の方へと行きました。ボク達は慌てて後を追うと、ルイさんは此方を見て

「ご飯食べようか、好きなものを選んでいいよ?」

ルイさんは「さいふ」を出すと、お風呂に入る前に麗菓さんに渡したのと同じぐらいの大きさをした円いものを機械に入れました。

ボクがまじまじと見ていたからか、ルイさんは此方を見るとその円いものをボクに手渡します。それはとても軽くて、小さく、いつか畦道で拾った瓶の蓋のようでした。

「お金っていうんだよ」

お金、口の中で反芻しルイさんに返します。彼は受けとると寂しそうな微笑をしてさいふにお金を戻しました。

「…取り敢えず軽食にしようか。俺が勝手に決めるね?」

言いながら赤く光るボタンを押し、小さな紙切れを取るルイさん。その紙切れを台の上に置くと台の向こうにいる優しそうな顔をしたおばさんがなにやら文字の書いた札をくれました。

「麗奈、貴女数字は読める?」

それまでボクとルイさんのやり取りを見ていた麗菓さんが、ボクの持っている札を見詰めながら問います。ボクは首を横に振ると麗菓さんを見詰め返し

「…簡単ものなら読めるけど、……数字はちょっとしかわからないんだ…」

読めて精々いちからきゅうまで、そういうと麗菓さんは優しく微笑んで

「これは12、いちとにで「じゅうに」と読むんですよ」

優しい声音で言われ胸が温かくなりました。

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