愛色と哀色の夜
重く、苦しい沈黙が続きました。ボクもルイさんも微動だにせず、ただ俯いています。
「……なるほどね。…あの娘とは真逆なんだ」
ルイさんは隣にいるボクにしか聞き取れない声で言い、席を立ちます。麗菓さんはおっくうそうに見上げると
「うん、大体の事情はわかった。…そういう話なら簡単さ、俺についてくればいい」
さも当然のように言うルイさんを、ボクはぽかんとして見ていました。
「…そんな閉鎖された世界なら、尚のこと俺と来るべきだよ。さぁ行こう」
状況がわからないうちに、ルイさんは歩いて行ってしまいました。ボクも麗菓さんもぽかんとしてお互いの顔を見詰めます。
「ちょ、ちょっと待って!」
呼び止めるとルイさんはゆっくりと振り返り、此方に視線を向け、
「なんだい?……××」
「え…?」
雑踏で最後が聞き取れなかったので聞き返すと、ルイさんは麗菓さんを見ていました。
「大丈夫だよ、きっとお父さんは気付いていないから」
「…え…」
声にならない声で麗菓さんは言うと、ボクを見て決心したようにルイさんの後を追いました。