愛色と哀色の夜
「次は服を見に行こうか?」
せんとうを出たところでルイさんはそんなことを言いました。…確かにボクの服はぼろぼろだし、靴も履いていないけれど、ボクにとっては充分温かいです。
「……こんな夜遅くにお店やってるの?」
疑問を口にすると、ルイさんは悪戯めいた笑顔でうん、と答えました。
「今知り合いの服屋のところに行って、お願いしてきたんだ」
ボク達がお風呂に入ってる間、と言われ麗菓さんの肩がぴくりと動きます。ボク達にお金を渡したあと、ルイさんが何処かに行ってしまった理由を知りたかったのでしょう。
「…それにしては随分早かったんですね…?」
わたし達がお風呂に入ってたのは1時間ぐらいです。その服屋さんが何処にあるのかはわからないけど、普通ならもっと時間が掛かると思います。
そうルイさんに言うと、彼は少し困ったように笑って
「麗菓ちゃんは鋭いね…」
ぽんぽん、とボクの頭を撫でると先に行ってしまいました。
「…まぁ、納得はいかないけれど行きましょう?」
す、と前に出された手を握り、ボク達はルイさんのあとを追います。麗菓さんの手は温かく、柔らかく、そして一種の悲しさも覚えました。