愛色と哀色の夜
真っ暗で、何もない道をボクと麗菓さんは歩いていました。
「…ねぇ、麗奈」
「ねぇ、麗菓さん」
重苦しい沈黙を破るために名前を呼んだら、声が重なりました。そのことで、ボク達はまた口を閉ざします。
やがて、意を決したように麗菓さんが口を開きました。
「…ねぇ、麗奈。……別々になっても、たまには会いに来てね?」
泣きそうな声で言われ、ボクは頷きます。
出会ってまだ時間も経っていないのに、ボク達はまるで本当の家族みたいに互いを大切に思っていました。
「もちろん。…麗菓さんも、たまに会いに来てね?」
こくん、小さく頷くとボク達は再び黙り込んでしまいます。
「ねぇ、麗菓さん」
ふと立ち止まり、夜空を見上げます。呼び止められた麗菓さんは此方を向き、不思議そうにボクを見詰めました。
「…いつか、一緒に行こうね」
満天の星を見て、「せんとう」で麗菓さんが言っていたことを思い出します。
ボクを真似るように麗菓さんも上を向き
「…うん…、絶対ね…」
その目の端に、何か光るものが見えたのは、きっと思い違いでしょうか。
「もう、行こうか…」
どちらともなく手を繋ぎ、杏さんのお店へと戻ります。
「…大好き…」
麗菓さんが何事かを呟きましたが、星を見ていたボクには聞こえませんでした。
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