愛色と哀色の夜
車内は暖房が効いてとても温かく、入った途端眠気が襲ってきました。
「……寝てもいいよ」
いちばん端、わたしの右隣に座っているルイさんは何処かさっきまでとは違う、無愛想な声で言います。
「ほんと?じゃあ、寝ちゃうね」
言うと、麗奈は此方の肩に頭を乗せ静かに微睡み始めます。その姿にわたしは、再び口付けたくなりました。
「…麗菓ちゃんも寝たら?道中は長いし、着いたら起こすから…」
「……いえ、わたしはまだ、暫くは起きていようと思います……」
杏さんにちゃんとお別れをしたいから、心の中で呟き、満天の星が輝く空を、車の硝子越しに眺めます。
−−ブルルルルル−−
やがてエンジン音が響き、ゆっくりと前進を始める、わたし達の車。
後ろを見ると、涙で顔をぐちゃぐちゃにした杏さんが、何かを叫びながら、手を振っていました。