愛色と哀色の夜

朝焼けが真っ青な空に変わり、わたし達は川沿いを散歩していました。

「…そうなんですね。それで、鷹井さんはわたしを…」

車を降りて1時間ぐらい経ったでしょうか、その間互いの(と言ってもほとんど「風宮」に関する)話を沢山しました。

「うん、……だから今、こうして会うことが出来てうれしいよ」

鷹井さんは、その風宮に関わっていたご友人からわたしのことを、「鳥籠に閉じ込められて生きたまま操られているような少女」といわれ、わたしに興味を持ったそうです。

「…鷹井さん、ありがとうございます。」

誰も信じることが出来なかったわたしに、興味や関心を持ってくれた人がひとりでもいたことが、今のわたしにとって、救いでした。

「はは、お礼を言われるのは何か違う気がするんだけど……。…どういたしまして…かな?」

鷹井さんは朗らかに笑うと、ぽんぽんと頭を撫でます。その度に、心が温かくなるように思うのは勘違いなのでしょうか。

「…ちょっとお腹が空いたね、この先に料亭があるから、そこで食べて行こうか」

手を差し出され、握り返すと鷹井さんは優しく微笑みます。
わたしは、本当の父のような鷹井さんに、少しずつ惹かれていきました。







……このあと、彼が裏切るとは知らずに。







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