愛色と哀色の夜

別離

*****


「…っ…ん………?」

目が覚めると、見たことのない場処にいました。

「…此処…」

「あ、起きたかい。…悪いね、あの女の子には途中で降りて貰ったよ」

運転席に座っている男の人は、ボクの方を振り向いて淡々と言います。

「え…?……あの女の子って、麗菓さん……?」

「そう。その「麗菓」って子は鷹井と一緒に途中で降りた。そして、オレはもう少し先までしかキミ達を送るが出来ない。………そうだろ、ルイ」

何が何かよくわからないうちに運転席の男の人(そういえばいつの間に代わったのでしょう)が早口にルイさんに話掛けました。

「ん…、…嗚呼、か………麗菓ちゃんには先に降りて貰ったよ。…麗奈ちゃんには悪いけど……」

話掛けられたルイさんは少し眠たそうにすると、大きくあくびをしました。そしてボクの方を見て軽く微笑みます。

「…大丈夫、俺もこいつも麗奈ちゃんの味方だよ。お前、麗奈ちゃんに自己紹介したか?」

ぽん、と頭を撫で運転席を見るルイさん。

……なんでしょう、初めてルイさんを見た時に感じた嫌な感じがさっきから止まりません。

「…嗚呼、そう言えばそうだね。……オレは鷲尾(わしお)という。まぁ、よろしくね」

運転席の人、鷲尾さんは無愛想に言うと再び前を向きました。

「…相変わらずつれないねぇ、鷲尾さん。……こいつはね、俺がこっちに来てから『知り合い』のツテで知り合った運び屋なんだよ」

運び屋、ボクが言うとルイさんは運び屋について簡単にですが教えてくれました。


運び屋とは、人や物を頼まれた場処に運ぶというお仕事なんだそうです。鷲尾さんはさっきまでいた男の人(たかいさん…だっけ…)と一緒に仕事をしていて、ルイさんに会ったのはその知り合いの人を通じてなんだそうです。


「…ふぅん…じゃあ、今はお仕事をしてる最中なんだね」

そういうこと、鷲尾さんは短く答えて、あとはハンドルを握ったまま黙ってしまいました。

「…鷲尾さんは無愛想だけど、運転技術はピカイチなんだよ。少なくとも、俺が知る中で鷲尾さんと鷹井さんを上回る技術を持つ人はいないんじゃないかな」

耳元でルイさんは言うと、くすっと鷲尾さんを見て笑いました。

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