愛色と哀色の夜

暫くして、ボク達を乗せた車はあるお家の前で止まりました。

「はい、到着。……ちゃんと届けたからな、それじゃあ、縁が遭ったらまた」

淡々と、早口に言って扉を閉じようとする鷲尾さんをルイさんは止めて

「折角だし、鷲尾さんも少しだけ寄っていきませんか?」

「…気持ちはうれしいけどな、オレは今仕事中だから駄目なんだ。……また誘ってくれよ、勿論奢りで」

鷲尾さんは少しだけ頬を緩めて、すぐまた元の表情に戻りました。ルイさんも、それ以上は止めないで肩を竦めます。

「じゃあ、またな」

「えぇ、また」

ルイさんは挨拶をすると、鷲尾さんの車が見えなくなるまで手を振っていました。

「…やっぱり鷲尾さんは堅物だな…まぁ、そこがいいんだけど。……それじゃあ行こうか」

此方を向き、手を差し出すルイさん。ボクはその手を取ると、「せんとう」に行った時のようにルイさんと並んで家に入りました。

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