愛色と哀色の夜
家の中は、しんとしていました。
せんとう(と杏さんのお店)以外で建物の中に入ったのは初めてですが、なにかとても寂しい感じがします。
「おはようございまーす……って、まだ寝てるかな?」
ルイさんは家の中にいるはずの人に挨拶をすると、靴を脱いで中に入りました。
「麗奈ちゃんも入ったら?」
言われて、さっき杏さんの家で貰ったばかりの靴を脱ぎ、中へ入ります。
「えっと…お、おじゃまします…?」
昔、育ててくれたお婆さんに教わった言葉を言い、中に入るボク。すると、何処からか扉の開く音がして
「あら……、…いらっしゃい、随分と早かったのね…」
扉を開けて表れたのは、黒い髪を腰のところまで伸ばした、綺麗な女性でした。
女性は、優しく微笑んでボクとルイさんを見ます。
「ふふ、もう少し遅れるかと思ってた…。………久しぶりね、元気だった?」
優しい顔のままルイさんを見た女性は、目だけでボクを見て言いました。
「え、久しぶり…って…?」
「ふふ。……まぁ、立ち話も何だから、座敷に入って?温かい飲み物を用意するわね」
言って再び扉を開く女性。
ルイさんは小さく息を吐くと、ボクの手を引いて奥へと向かいました。