愛色と哀色の夜
「……そういう、ことよ…」
泣きそうな声にそちらを向くと、《遠藤 乃愛》さんは辛そうな顔でボク達を見て、
「…だ、からっ……わたしは言いたくなかったのっ、事実を知らせるのは嫌なのよ…っ!!」
泣き崩れた姿は、まるで子どものようで、目の前で起こったことなのに、夢の中にいるようでした。
「…麗奈……麗亜、ちょっとごめん」
ルイさんはボクの首筋に触れると、せんとうで麗菓さんが口付けた部分を露にします。
「麗亜の此処に、星形のほくろがあるのを知ってる?」
「…うん…麗菓さんが言ってたから」
ルイさんは首筋から手を離し、コートを脱ぐと、服の首のところを引っ張ってボクに見せます。そこは、休憩中にボクに見せてくれた方の首筋でした。
「麗亜は右に、俺は左に。……これが、「大罪人」の子どもの証なんだ」
「その…さっきから言ってる「大罪人」って誰?…お、おかあさんの名前が、その「大罪人」って人と同じ名前だそうだけど…」
『if』世界というのもよくわからないのですが、いちばん知りたいことを聞くとルイさんは困った顔で
「「大罪人」、《遠藤 乃愛》については俺も詳しい訳じゃないんだ。…元来俺は、この世界に「存在しない方」の双子の片割れだからさ」
存在しないとはどういう意味でしょう。そう聞こうと口を開くと、蹲っていたお母さんが立ち上がりました。
「遠藤 乃愛は、《ロワ=エトワール》、《リヴィエール国》、それに関係する《古谷 璃菜》、《アンネ=シャーロン》、《リベラ=シャーロン》、《ルイ=ノワール》、《イア=フィレンツァート》の歴史を変え、「エトワールの奇跡」を歪んだものにした、遠藤家最大の犯罪者よ」
一気にそこまで言うと、軽く息を吐き、再び此方を見詰め
「ル……奈央がこの世界に存在していない理由は、歪んだものとなった「エトワールの奇跡」のせいよ」
そこまで言うと、お母さんは俯いてしまいました。
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