愛色と哀色の夜
「…そうなんですね…」
わたしは初めて麗奈に会った時のように、自分の身の上について語りました。話を聞いている間、花耶さんは何気ない一言にも相槌を打って下さり話していてとても安心出来ました。
気付けば自分から色々なことを言っていてつい話し過ぎたと苦笑してしまいます。
「こ、こんな話…つまらないですよね。なんか、ごめんなさい…」
慌てるように言うと花耶さんは不思議そうに首を傾げて此方を見詰めます。深緑の瞳は妖しく輝き、この瞳に嘘は吐けないと思いました。
「……今気付いたんですけど、風……麗菓さんとわたしの瞳…同じ色なんですね」
鈴の鳴るような声で言われ、花耶さんを見た時に思ったことを思い出しました。
わたしは花耶さんを見詰めるとずっと疑問に思っていたことを口にしました。
「…そう、そうなんですよ。今日初めて会ったわたしと花耶さんの瞳が同じ色なのは可笑しいと思うんです。それに、わたしは杏子さんや鷹井さんと一緒にいたはず…」
「…やっぱり、先に来てたんだね」
不意に何処かから声が聞こえ、誰かが此方に向かって来る気配を感じました。わたしは花耶さんを背後に隠すと暗闇に目を凝らします。
声の主はその姿が見えるか見えないかの位置で止まると、ふっ、と笑いを漏らしました。
「…やぁ、かわいい仔猫ちゃん達」
暗闇の中だとわからないほど暗い、闇色のコートを纏ったその人。
……ルイさんは初めて会った時のように、静かに佇んでいました。
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