愛色と哀色の夜
先に動いたのは必死な様子で話していた少女だった。彼女は隣にいる少女を庇うようにすると深緑より深い翡翠の瞳で此方を見詰める。
それはまるで最初に出会った時のようで、それでいて最初に会った時とは違かった。
その矛盾に思わず笑いを漏らすと少女は訝しいものを見るように俺を見詰める。
「…やぁ、かわいい仔猫ちゃん達」
初めて出会った時と同じ口調、同じ言葉で言うと微かに空気が震えるのを感じた。
少女はおそるおそるという風に顔を上げるとそのつぶらな瞳を見開く。
「…ルイさん…」
数時間振りに聞いた声は畏怖や恐怖よりむしろ、煽情的で何処か寂し気だった。
翡翠の瞳は逡巡するように揺れて、少女は背後にいる少女に視線を向けた。その視線を感じたのか、背後にいた少女も此方に気付いたように
「…奈央…さん…?」
『if』世界の俺の名を呼んだ。