愛色と哀色の夜

「麗奈」、その存在は最早ただ一介の少女というには物語において重要な立場にいる…い過ぎている名前だと、俺は思った。

「…あの……れ、麗奈は、…無事なんですか…?」

今にも泣きそうな声音で言う姿は、さっきまで花耶を庇っていた姿とは一変し『if』世界の花耶と同じようにおどおどしている。

「………無事、だと思うよ。…《乃愛》のやつ、自分の娘だからって麗亜……には甘いんだからさ」

《乃愛》がどんな術を使ったかはわからないが、今此処に俺がいるということが麗亜も無事だと言う何よりの証拠だろう。

「麗菓ちゃん達の世界に行く際、俺は『秘術』を曲げたんだ。…だから、俺か麗亜どちらかが消えればまたどちらかも消えるんだよ」

そういう決まりになっていることを話すと、安心したように息を吐く麗菓。その隣で話に付いてこれず首を傾げる少女にも分かるように、俺は説明した。

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