愛色と哀色の夜

虚空

*****


「…こ、此処は…?」

気が付くと真っ暗な空間にいました。

「っ…お、おかあさん…?!」

慌てて起き上がり辺りを見回します、だけど広がるのは暗闇だけでおかあさんは見付けられません。

ボクはなにが起こったのか上手く理解出来ず暫くぼーっとしていました。

(…確か、おかあさんにキスされて、目の前が暗くなって…)

暗闇に目が慣れると同時に段々と記憶がはっきりしてきます。

「…すぐに来るって、言ってたよね」

意識を失う前におかあさんが言った言葉を思い出し、ひとり頷きます。暗闇に慣れた目で周りを見ると、遠くに薄明かりの当たっている場処があるのがわかりました。

「あそこ、明るい…」

近付こうとも思いましたが、ひとりで行くのは不安なのでお母さんを待とうと思いました。

「…だけど、なんであそこだけ明るいんだろ…」

立ち上がろうとして周りを見ると、なにか黒い物が横たわっているのがわかりました。その黒いものは微かに動くと死んだように動かなくなり、ボクは数時間前みたいに麗菓さんじゃないかと内心期待します。


「…んっ…?………ふふっ、相変わらず、この空間は慣れないわね」


不意に下の方から声が響き下を向くと、黒い物体が此方を見上げていました。

「…先に起きたのね、…流石、私の娘」

黒い物体…おかあさんは言うと、満足そうに微笑みます。

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