愛色と哀色の夜

「貴方の視たもの全て私が変わりになる、ってすごいと思うんですよ」

歌い終わり一息ついた麗菓は『無限世界』という歌について語り始めた。

無理矢理とは言えピアノを習っていただけあって、少女の考えはとても音楽性に溢れていて思わず感嘆の溜め息を漏らす。

「麗菓さんは本当にその歌がお好きなんですね…」

感動したように告げる花耶に麗菓は一緒に歌うよう誘った。

「花耶さんの声ってすごい綺麗ですから、歌ったら絶対映えると思うんです!」

力説する少女に苦笑を漏らすと困惑したように此方を見詰める瞳と目が合う。翡翠に見詰められ俺は視線を逸らせなくなった。

「な、奈央さんからも言って下さいよぅ…」

すっかり麗菓のペースに飲まれた花耶は若干涙目で此方に助けを求める。

仕方がないから花耶に加勢しようと口を開いた途端、





「おかあさんっ」





聞き慣れた声が響き振り返る。





「全く、……本当にかわいい」





そこには、ひとりの少女と女性が本来あるべき姿で此方に向かっていた。


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